交通事故
光輝が知り合いのチンピラやくざから聞いた当たり屋のひとつの手口だった。
その日の夕方に携帯で早速、電話をいれたがあいにく子供が出た。根掘り葉掘り家のことを聞き出すと
どうやらやはり父親は病死したらしく母親の白林仁美がパートの稼ぎと亭主の保険で生計を立てているようだった。
母親がパートから帰る夜を狙ってもう一度電話をいれた、そして電話に出た仁美を脅し上げたのだった。
「おい、おばさんよー、人に怪我をさせといて逃げるはないだろうが」
と恫喝する光輝。
「そんな、私はあの子が大丈夫って言うから・・・」
とびっくりして怯える仁美。
「言い訳するなよ、あんたひき逃げになるんだよ、こういうのは。悪いって気持があるんだったら、ちゃんと挨拶に来い。来なかったらただじゃあすまさんからな、組にも喋るぞ」
と素人の主婦が震え上がるように嘘をついて脅した。「わっ わかりました。明日、仕事が終わりましたらすぐに伺いますので」
と震える声で仁美は答えた。相手の男はヤクザかもしれないと怯える孤高の母親であった。
仁美は今年40歳になったが、今まで事故の経験などなく保険などの対処方法もまったく知らなかった。頼りにするはずの主人もいないのだ、光輝の電話にうろたえてしまったのも仕方ないことだった。主人を病気でなくし、二人の子供を育てるためにパートをしながら頑張る母親を襲った突然の災いだった。




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