デリシャス・フィア──13
やっぱり誰かいる。
カボチャのお面……、違う。
ゴーストの白いテーブルクロス……、これも違う。
だとしたら……。
花織の視線はもうそこから離れない。
その時だった。
魔女の姿をしたマネキンの体が大きく波打って、白い乳房は羨ましいほど揺さぶられ、異物をくわえた膣口からは絶頂のサインが飛沫(しぶき)をあげて吹き出した。
「っ……、あっ……、うっ、ぐっ、んっ、……、……」
痙攣した声が細々と聞こえたのと同時に、頭部を隠していた三角帽子がはらりと落ちた。
そこから現れたのは、赤々と火照った頬と、汗の粒が滲む額と、さまよう目と、湿った唇。
すべてのパーツを頭の中の記憶に当てはめてみると、それは霧嶋優子とほぼ一致するのだった。
あれ?優子にそっくりだ。
ていうか優子だよ、これ。
そっか、私は優子に会わせてもらう為にここに呼び出されて、そうしたら優子がいたわけだから、驚くほどのことでもないじゃん。
でも何でだろう、全身の力が抜けて立てないし、泣きたくないのに涙が出てくる。
悲しい出来事が起きると、人は誰でもこんなふうに胸が寒くなって、目の前の事実を否定しようとするのだろうか。
局部を責め続ける甘い刺激に気を失いかけている優子の前で、花織の意識は感情ごと真っ逆さまに落ちていった。
優子は人に犯されたのではなく、最強の媚薬「デリシャス・フィア」に犯されていた。
花織もまた自分が彼女のように変わり果ててしまうかも知れないという恐怖と快感で、その場に失禁した。
その直後、視界を遮る手のひらが見えたかと思うと、誰かに後ろから抱きつかれる格好で体を絞められた。
抵抗する気力はもうほとんど残っていなかった。
されるがままに体を預けていると、背後から声が聞こえた。
「見ちゃダメだ!」
その声には聞き覚えがある。
「俺が推理ゲームだなんて興奮していたから、結局優子を助けてやれなかった。ごめん」
私に何か言ってくれているけど、言葉を理解できる状態じゃない。
でも、とても安心する声。
「もう終わったよ。花織は大丈夫だ。花織だけでも助けることが出来て良かった」
彼がしゃべるたびに、彼の喉仏が私の髪を撫でている。
「もっとはやく自分の気持ちに気づいていたら……、花織のことが好きだって気づいていたら……」
なんだかわからないけど、とても幸せな気持ちが溢れてくる。
ほかの事は何も考えたくない。
今はだだずっとこうしていたい。
色々ありすぎて、なんだか疲れちゃったな……。
小田佑介の腕の中で、岬花織は深い眠りに就いた。
つづき「デリシャス・フィア──最終話」へ







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