デリシャス・フィア──1
_ショッピングモールのエントランスはたくさんの人を吸い込み、吐き出してはまた吸い込み、人の流れは血管をとおる血液のように循環して、目的を持った者とそうでない者とがせわしく交錯している。
_ここに来ればたいがいの用が済んでしまうことを考えれば、それだけで小さな街だとも言えるだろう。
_外は生憎(あいにく)の雨だ。
_屋内だというのに外よりも明るく照りつける照明に、つい天気を忘れてしまいがちになる。
_それでも、個性的なショップの「顔」でもあるディスプレイに目を向けてみれば、季節ごとに違った表情を見せるファッションや雑貨やスイーツに至るまでが四季を感じさせてくれている。
_たとえば海の向こうの文化と日本文化が同居している場面を目にしたとしても、やはりそこは日本人の海外への憧れなのか、ふしぎと違和感は感じない。
今年もハロウィンの時季が来たのね。
_そう思いながら立ち止まるが、またすぐにヒールの先を別の方へと向けなおして、昼だか夜だかわからないモールの中を人混みにまぎれて歩き出す。
_ふと携帯電話の背面の小窓に視線をおとす。
_22時を少し過ぎていた。
終電には間に合うか。




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